増やす道つくりたい
開発8部
長谷川 直美 さん
SMCの空気圧機器は多岐にわたる。金属切削時に発生する切粉や、加工対象物(ワーク)のほこりなどを吹き飛ばすインパクトブローガンは、工場自動化(FA)に直接関わる製品ではないものの、工場の生産性向上に大きく貢献する。新型のインパクトブローガンは従来型のエアガンから大幅に構造を変更。瞬間的に高圧の空気を吐出し、短い時間で同様の仕事を行うことが可能となり、従来品に比べて87%も空気の消費量を削減できる。実際、工場のエアー(圧縮空気)消費量の半分はエアブローに使われるとされ、省エネ、二酸化炭素(CO2)の削減に大きく貢献するものだ。開発に携わった開発8部の長谷川直美さんは、女性活躍の後押しに積極的なSMCの企業風土や支援制度に支えられ、活躍の場を広げてきた。
父親の影響で、小学生のときはミニ四駆が大好きでした。女の子っぽい遊びはしなかったです。自宅にコースがあり、男の子と一緒にレースをしていました。メカ好きでもあり理科が得意でした。紫キャベツを煮た汁の色の変化で酸性やアルカリ性を確認する実験は自由研究の思い出としてよく覚えています。地元茨城県の高校、大学に進みました。自宅のそばでコンビニエンスストア店員のアルバイトをしていましたが、飲み物など商品の発注を任され、近所の学校の行事が分かるのでチャンスロスなく準備でき、時給を上げてもらえたのは良い思い出です。大学では金属素材を研究しました。太陽光パネルの発電効率を高めるため、太陽電池の表面形状を制御して太陽光を効率よく受けるようにする、というのが研究テーマです。研究室ではソフトウエア、ハードウエア双方の技術を扱っていて、金属加工のスキルやソフトの知識を得られました。卒業制作はロボットで、自動走行の4輪ロボットを7人チームで作り、ユニークさが認められて学科内で表彰されました。大学時代は水泳部に入りバタフライの選手でした。
SMCは学部の卒業時に知りました。OBの説明を聞いたとき、事業内容が面白いと感じました。大学院を修了する際、迷わずSMCを志望しました。入社後、開発8部に所属し、入社当時は方向制御機器の4・5ポートバルブの開発に携わりました。開発といっても一からではなく、従来製品の小型化、省エネ化のような改良が主でした。2017年より開発に携わった新型のインパクトブローガンは、弁構造に自部署製品の2ポートバルブの構造を採り入れました。インパクトブローガンの開発は当初、5、6人でスタートしました。当初から省エネが最大テーマでした。開発期間は約2年半。少人数ながら、コミュニケーションを取りつつ進めました。新しい構造にして省エネ化を果たしましたが、着想したアイデアが良く、これならできるはずということで試作まで進めました。実際に、プロトタイプがすでに量産と同じような性能になりました。難しかったのは、今までにないブローガンなので、どうやって特長を伝えたら良いか、という点でした。ブローの威力をアピールするため、最終的に製品紹介に動画を取り入れたのですが、当時SMCでは動画で製品を紹介するというケースがなく、初の試みになりました。開発時は、打ち出すエネルギーを落とさず音を抑える技術の確立に苦労しました。先端のノズルに三つの穴をあけて空気を通すという形状により解決しましたが、一瞬で飛び出す空気の流れをシミュレーションすることができず、形状を決めるまでは試行錯誤しました。静音性は特に米国の工場では必須です。労働安全衛生法により発生音に規制があるためです。日本をはじめ世界中で静音性は付加価値になるため、開発が果たせて安堵(あんど)しています。インパクトブローガンは好評で、人が持つガンタイプではなく、機械と連動してエアーを吹き出す据置型タイプのニーズもあり、近年製品化を果たし徐々に売り上げを伸ばしています。技術の広がりがあるのは、開発者としてうれしい限りです。
出産を控えており、産休・育休に入ります。併せて引っ越しもする予定で多少私生活が慌ただしくなります。休暇があけても、技術者として新製品開発に携わりたいです。自動車メーカーに出向した経験も開発に生かしたいです。SMCは女性技術者がまだ少ないので増やすための道をつくれれば良いと思います。SMCは勤務時間帯を選べるようになるなど、子育てと仕事を両立できるような仕組みを整えています。しばらくチームの皆さんに開発はお任せして、出産と子育てにつとめます。幸い、周りには出産子育てに対して理解者がたくさんいるため、不安はありません。SMCは製品開発において要素技術の選定から量産まで通して携わることができます。試行錯誤も自由です。私は直感タイプでトライアンドエラーの繰り返しで進める事が多いので助かっています。