IoTの恩恵届けたい
開発5部
大江 夏樹 係長
工場には駆動源として使うエアー(圧縮空気)の配管網がある。工場で使う電力の20~30%はエアーだとされている。つまり、あらゆる空気圧機器のエアー使用量削減こそ、省エネルギーにつながる。もちろん、エアー配管網のエアー使用量を減らすことも重要だ。 SMCの「エアマネージメントシステム(AMS)」は、設備の稼働状態を検知し、自動的に供給圧力を調整することでエアー配管網の消費電力の削減に貢献できる画期的製品。「モノを生産していない時(待機時)のエネルギーコストを削減したい」というユーザーの声を受けたことが開発のきっかけだ。IoT(モノのインターネット)関連の新技術を使うなどSMCにとっても難しい開発案件だった。開発を担った開発5部の大江夏樹係長は、「別の部署が担当する技術を組み合わせる開発の進め方に苦労した」と振り返る。
小さい頃は体を動かすことが好きでした。自宅の前が大きな公園だったこともあり、野球やサッカーをしていました。小学生から高校生まではバスケットボールです。ポジションはセンターで、高校のときは地元の県大会でベスト8まで進みました。勉強はやはり理系で、数学や理科が好きでした。大学は工学部の電気工学科に進み、制御理論のシミュレーションを研究していました。大学では研究の傍ら、ピザの宅配をしつつマージャンなど遊びも楽しんでいました。就職シーズンになり、メーカーで働きたいと考えていて、求職欄でSMCを見付けました。SMCは、会社の規模が大きく、様々な業種で製品が使用されているのが魅力の一つです。SMCに入り、産業用通信機器で使う、フィールドバス通信関連を担当しました。フィールドバス通信は重要技術で、SMCが得意とする空気圧機器のケーブル使用量を減らすために不可欠なものです。当時は右も左も分からない中で、試作品の製作や実験をする、ということを繰り返していました。実験は主に通信の確認やノイズ試験をしていました。電気回路の設計も学びました。先輩が設計した回路図を見て、機能を検証するといったことや、回路図をもとに配線図を作っていくことも仕事から学びました。大学時代にオペアンプやトランジスタなどの電子部品については習いましたが、実際の組み込みは仕事で覚えました。目的をちゃんと果たしているか機能を検証する作業は難しいものです。フィールドバス通信の後、センサー系のチームに移りました。製品は圧力センサー、流量センサーなどです。流量センサー一つ取ってもいろいろな特性があります。それを回路や流路と組み合わせ、狙い通りの特性を出すことはとても難しいです。過去のノウハウや流路解析のシミュレーション技術が求められます。コストやスペースの制約があることは企業ならではで、大学の研究とは違う難しさがあります。
開発を手がけたAMSは無線通信、センサー、レギュレータや排気弁など多くの技術の組み合わせです。フィールドバス通信、センサーなども組み込むため、これまでのキャリアが生きています。AMSは設備のエアー消費流量が事前に設定した閾値(しきいち)を下回ると待機状態であると認識し、供給圧力を必要最小限のものに自動的に下げることで、消費エアーを削減できるという製品です。上位通信システムからの指令と流量センサーからの情報を受けレギュレータに指示を出し、エアーの圧力を制御します。排気弁はエアーが使われない時に遮断します。構成する機器は、多くのチームが開発したもので、それを融合する形です。一つの製品に統合する場合、別部署の技術を研究し、その個々を組み合わせたシステムとして仕様を調整します。この作業はなかなか大変です。SMCの中でも独特な業務だと思っていましが、システム化が進む中で、今後はこのやり方が増えていくのだと思います。AMSはおかげさまで多くのユーザーに反響を受けています。特に海外では工場が広大なことから、一カ所でエアーの管理をしたいというニーズが大きいようです。当社のトップも開発時から「これは売れる」と考えており、様々な部署が一丸となって、短期間で開発することができました。好評な製品のため「他の流体でも使いたい」「無線で色々なセンサーをつなげたい」「もっと大きな流量や、小さい流量で利用したい」など、多くの声をいただいています。
AMSという注目製品開発に携わることができたので、今後も省エネ、二酸化炭素(CO2)削減など社会的な課題解決に貢献する製品を開発したいです。開発という業務にはやりがいがあります。これまでのノウハウを生かし、ユーザーにもIoTでメリットを与えられるような製品を作っていければと考えています。さらに、人工知能(AI)の導入による自動化や最適化への貢献も必要になってくると考えています。SMCの良さは、製造する空気圧機器がどの工場にもあるというスケールの大きさだと思います。開発5部は技術者やスタッフを含めて約200人が所属します。いまは製品をまとめる立場なので、組織としての動きが求められます。チームメンバーに指示を出す際は必ず自分で内容を消化し、考えを入れて話をするよう心がけています。一報で、製品開発では自分自身で仕様を決めて最終形まで一貫して開発でき、大きな組織ながら自由度の高さと楽しさがあります。